日比谷の街角 弁護士 稲垣隆一 稲垣隆一法律事務所

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2011年11月

不親切な障害基礎年金の仕組み 

事務所の社会保険労務士山下律子が怒っている。事情を聴けば怒って当然だ。私も怒っている。

その理由は二つある。
第一の理由は,相談に行った年金事務所の担当者が,障害者に受給権があるにも関わらず,受給権がないと誤った説明をしたことだ。障害者は,そのために,これまで請求を諦めて障害基礎年金を受給できなかった。

その2は,そもそも,請求を要件とする障害年金の受給の仕組みが,障害者への配慮を欠いた不親切なものであることだ。

障害基礎年金の原則は,障害認定日に一定の障害等級にあたる障害の状態にある人に「支給する」ものだ(国民年金法第30条本文)。

この障害等級。精神障害の場合,もっとも重い障害等級1級は,「精神障害が日常生活の用を弁ずることを不可能ならしめる程度」,つまり,他人の援助を受けなければ,ほとんど自分の用を弁ずることができない程度というものだ。

ところが,この障害基礎年金の給付を受けるには,年金受給権者による請求が必要だ。

国民年金法第16条は「給付を受ける権利は、その権利を有する者(以下「受給権者」という。)の請求に基いて、厚生労働大臣が裁定する。」と規定している。

もうおわかりだろう。今の仕組みでは,「他人の援助を受けなければ,ほとんど自分の用を弁ずることができない程度」にある人が,障害基礎年金の受給を請求する手続をしなければならないのだ。

この請求手続は極めて複雑。国の案内は,こっけいなほどノー天気だ。

日本年金機構の案内を見てみよう。こうだ。
http://www.nenkin.go.jp/question/1300/1306/1306.html

Q.1306

<問>障害基礎年金はどのようなときに受けられますか。

<答>

国民年金に加入している間にかかった病気やケガがもとで一定以上の障害が残り、障害の年金を受けられる保険料の納付要件を満たしているときは、障害基礎年金を受けることができます。
受けられる年金には1級と2級があり、障害の程度によって決められます。

障害の程度が該当していると思われる場合は、市・区役所または町村役場の国民年金の窓ロ、お近くの年金事務所または街角の年金相談センターでご相談になり、障害基礎年金の決定請求の手続きを市・区役所または町村役場の国民年金の窓口(初めて医者の診察を受けた日が第3号被保険者期間中である場合は年金事務所または街角の年金相談センター)で行ってください。


そして,請求手続に必要な書類は,およそ,「他人の援助を受けなければ,ほとんど自分の用を弁ずることができない程度」にある人が自分でできるものではない。
請求書,年金手帳,戸籍抄本,住民票,診断書,その他が必要だ。
http://www.nenkin.go.jp/receive/seikyu/shorui.html

一体どうしてこんな不親切な仕組みになっているのだろう。これでは,障害の程度が重い障害者は,障害年金を事実上受けられない。いつからこんな無謀な仕組みが放置され続けているのか。

そのために精神科ケースワーカーがいる。
しかし,現に,相談を受けたケースでは,精神科ケースワーカーは請求手続をせず,機能していなかった。

機能しなかった理由はいろいろあるに違いない。ケースワーカーを一概に責めるわけにはいかないだろう。

根本的には,そもそも,障害基礎年金の受給に,本人の請求手続が必要だという障害者に不親切な原則が問題なのだ。

特に,今回のように,年金事務所が法の解釈を誤ったケースでは,仮にケースワーカーが請求手続をしても,頓挫するだろう。ケースワーカーの手に余るこうした事案もあるだろう。不服申立などになればますますその可能性は高まる。そんなときには,社会保険労務士や弁護士の支援が必要だ。

診断をする医師,ケースワーカーと社会保険労務士,弁護士の緊密な連携が容易にはかれる仕組みが構築されて,そのもとで,本人の請求を要件とせずに,裁定手続,裁定,受給というフローがあったらとつくづく思う。

というわけで,事務所の社会保険労務士山下律子と弁護士稲垣隆一は怒っているのだ。







離婚を考える その1

離婚。様々な原因がある。
ただ,相談をしていて離婚初心者(当然か!?)によく見られる誤解のポイントは,こうだ。
それは,すぐに,調停や裁判をしたら離婚できるかどうか,相手や不貞の相手に賠償請求できるだろうか知りたいと思ってしまうことだ。ヒドイことになってアツクなっているから当然なのだけれど。

でも,離婚事件を扱っていると,離婚問題の本質は,離婚後の生活をどう立ててゆくかについての二つのポイントがあるとつくづく思う。一つは相手からの精神的な自立。もう一つは経済的な自立。この二つの自立に向けた確信か覚悟。この二つがなければ離婚問題は進められない。

なぜか。

離婚を成功させるということは,離婚後の人生を成功させるということだ。だから,離婚後の人生を充実させられる確信や覚悟がなければ,離婚は成功とはいえないからだ。

弁護士が法律相談を受けて,成功を見通せないのに,「不貞は離婚原因です。だから離婚できます。相手に慰謝料も請求できます。不貞は不法行為ですから不貞の相手にも賠償請求できます。」なんてことでは,法学部3年生の試験なら合格かもしれないけれど,うちの事務所では不合格だ。

弁護士に法律知識は不可欠だ。でも,知識は道具であって目的ではない。離婚事件における弁護士の目的は,依頼者が離婚を選択することによって平安,幸せ,人生を有意義に生きることができるという確信を得ることだ。

だから,私の事務所では,離婚の相談をうけると,この二つのポイントをじっくり見極める時間をとることにしている。

例えば,相手の不貞。子供もその姿に気づいている。相手を許せない。不貞の相手も許せない。子供のためにもうこんな相手とは一緒にいるべきでない。そこで離婚を考えた。という相談。

相談者は離婚後,子供とともに生活するつもりだ。子供は小学校5年生と高校3年生。子供が希望して,相談者が,子供の生活環境を良好に維持できるなら,親権の確保はできるだろう。子供の受験は迫っている。
ということは,離婚の一番の目的は,子供の受験の成功とその後の子供との生活だ。
だったら,離婚の時期は,子供の受験の後だろう。この当たり前のことが,アツくなっている相談者は気がつかない。「それまでどうするのか。あんな相手とどう暮らすのか。子供への悪影響はどう回避する?」

そんな相談って,法律相談じゃないでしょ。と思いきや,実はそうではない。法的手段の適用の問題で立派な法律相談。その大切さはこれまでのケースが教えてくれた。そして,弁護士も人の子親。様々な歴史を経た夫。

どんな相手でも人間。人間は誤ちを犯す。それに相談者が動じている姿を子供に見せれば,子供が一番動じることになる。ここは,子供のために一つ成長して,「相手は過ちを犯した。でも人は誤りを犯す。家族で相手を支えよう。」こんな気持ちで受験が終わるまで様子を見たらどうだろうか。まず,試みてみましょうよ。

こんな相談になることもある。

なお,不貞の相手に損害賠償できるといっても,不貞はこちら側。そのお相手があちら。こちらの関与の度合いによっては賠償請求不可か大幅な過失相殺ということにもなりかねない。それに,あちらに資力がなければ,判決をとって額にいれるだけ。あちらに精神的苦痛を与えたいとか,あちらの家庭に知らしめたいとおもっても,弁護士を依頼して,のーのーと継続,家族は知らずということもある。
どうしてもあちらを許せないということで,相手とあちらを共同被告で訴えるという手を使ったこともあるけれど,そのケースのことはまたいずれ。











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