今日の相談でこんなのがありました。
残念ですが債権者に対しては「遺産分割したから兄だけに請求してくれ」とは言えません。
事案は亡くなったお父さんが保証人であったので遺産分割して兄だけが保証人を引き継ぐということにしたのに,銀行から請求がきた。応じなければならないか?というものです。

大阪高裁決定昭和31年10月9日が,こうした事案について答えてます。
「被相続人の負債・・・は,可分のものであれば,相続開始と同時に,当然共同相続人に,その相続分に応じて分割承継せらるのであり,また,不可分のものであっても,これを特定の相続人の負担とするのは,債務の引き受けとして債権者の承諾亡き以上効力を生じない関係にあるのであるから,遺産分割の対象たる相続財産中には,相続債務は含まれないというべきである。」

というわけで,一旦弟にも帰属した債務を移動し合う遺産分割は,兄と弟の間では拘束力を持ちますが,債権者は拘束されないということになります。

お父さんの保証債務を負わないようにしようとするなら,相続を放棄するか,債権者の承諾を得るという必要があります。

注意しましょう。

では,お父さんが事業をしていて,その事業資金を借りて返していないまま亡くなった。事業を引き継いだのは兄だけで,弟は勤め人をしている。こんな事情で,銀行が,兄だけと保証人差し替えを話し合って,契約書の書換を兄とだけして,兄だけが保証人として署名したという事案であったらどうでしょうか。

銀行の意思が弟の債務を免除するという意思であったかがポイントになり,前後の事情から判断は別れることになるでしょう。難しい判断になりそうです。