修習生,丸の内に本社を構える大企業の法務部長,その会社の若手弁護士と四人で会食した。
話題は,修習生の就職の困難さ。
たしかに,司法改革の名の下に,大量の若手弁護士が生み出されていて,全員の就職は難しい時代だ。

修習生の関心は,どうしたら就職できるかに向きがちだ。
どうか,よい一歩を踏み出して欲しいと願う。

そこで,何をしたいのかと問うと,「企業法務」という。

事務所で弁護士を募集してみると,来る修習生は口々に「企業法務」を口にする。

法務部長は,そう言う修習生の心の内を,「企業法務をやる余裕のある事務所に席を得て,きれいで,楽な環境のもとで,高給を得たいということかな」と看破した。

そうなのだ,実務修習も短縮されて,弁護の実務修習は2か月。これで,「企業法務」が見えるわけもない。

修習生,新任の弁護士には,企業法務の力を求めることはできない。
以前出会った新任の弁護士は,貸借対照表も損益計算書も見たことがなかった。
それはそれで仕方ない。
彼らに求めたいのは,企業法務を通じて,誰の何をどうしたいのかというミッションを感じる力,育ち行く力なのだ。

その力はどのようにして育まれるのか。

修習生から来たお礼にこう返礼した。

私のころと今とは環境も違うことは十分わかっていますが,何時の時代にも,弁護士としての厳しさは変わらないように思います。
私が弁護士になるときにも,「こんな悪い時期に」と言われました。
要は,志をもって生きることだと思うのです。
様々なものを犠牲にし,多くの人々の助けを受けて,勉強し,資格を与えられたのです。
君の修習生,弁護士のバッチは,その多くの人々の期待の印です。
バッチを胸に付けた以上,この期待に応えるしか,私たちの生きる道はないのです。
今までに君を支えてくれた多くの人々の願いを実現する時がきたのです。
どうか,こうした期待に応えるために,これからの弁護士として何をなすべきかを考えて,その実現に向けて新任の一歩を踏み出してください。
期待しています。